世界最大級の時計見本市「ウォッチズ アンド ワンダーズ ジュネーヴ 2025」で入手した年鑑冊子『COLLECTION PATEK PHILIPPE 2025』が手元にある。掲載されている現行モデルは、グランド・コンプリケーション(超複雑時計)、コンプリケーション(複雑時計)、カラトラバ、ゴンドーロ、ゴールデン・エリプス、CUBITUS、ノーチラス、アクアノート、TWENTY~4……。今年の新作15モデルを含め、その数、実に160モデル以上。※2025年4月時点の情報。

 技術の粋を集めた独創的なモデルからレディスウォッチ、テーブルクロックまで、これほどの多彩な現行ラインアップを擁するスイスの高級時計メゾンは類を見ない。そして巷間言われるように、世界中からの需要が、年間約7万2000本とされる供給(生産)を大きく上回り、注文しても容易には入手できない状況が続く──。

ウォッチズ アンド ワンダーズ ジュネーヴ 2025の出展ブース
ウォッチズ アンド ワンダーズ ジュネーヴ 2025の出展ブース

 パテック フィリップの創業は1839年。その歴史は、数々の“世界初”や“特許”に彩られている。ごく一部を挙げれば、リューズ巻き上げ・時刻合わせ機構の特許取得(1845年)/スイス初の腕時計製作(1868年)/懐中時計用永久カレンダー機構の特許取得(1889年)/スプリット秒針クロノグラフ腕時計製作(1922年)/世界初の永久カレンダー腕時計製作(1925年)、腕時計サイズのワールドタイム(1930年代)……。各時代の最先端技術をタイムピースに反映し、顧客の期待に応えてきた。

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ジュネーヴ旧市街、ローヌ通り沿いのパテック フィリップ本店。目の前はレマン湖。
ジュネーヴ旧市街、ローヌ通り沿いのパテック フィリップ本店。目の前はレマン湖。
ジュネーヴ郊外の本社横にあるパテック フィリップの最新鋭ファクトリー「PP6」。
ジュネーヴ郊外の本社横にあるパテック フィリップの最新鋭ファクトリー「PP6」。

 2000年代に入ると、注油がほぼ不要で超精密成形が可能なシリコン(SilinvarⓇ)製のパーツを次々と新型ムーブメントに搭載し、メインテナンス性や精度、パワーリザーブ(駆動時間)の向上などを実現した。製造拠点・設備の更新も定期的に実施。2020年にはジュネーブの本社屋隣にのべ床面積約13万4000㎡の最新鋭工場「PP6」が竣工した。新工場ではムーブメントやパーツの製造と、それらの手作業による仕上げ・装飾、ブレスレットの製作と仕上げ・装飾、ケースやブレスレットなどへのジェム(宝石)セッティングも行われている。

「希少なハンドクラフト」の一つ、木象嵌(もくぞうがん)で装飾されたドーム・テーブルクロック「ジュネーヴの港」。
「希少なハンドクラフト」の一つ、木象嵌(もくぞうがん)で装飾されたドーム・テーブルクロック「ジュネーヴの港」。
クロワゾネ七宝と七宝細密画で装飾された文字盤を持つ、ゴールデン・エリプス腕時計「黄色い冠羽のキバタン」。
クロワゾネ七宝と七宝細密画で装飾された文字盤を持つ、ゴールデン・エリプス腕時計「黄色い冠羽のキバタン」。

 特筆すべきは、スイスの伝統的な工芸技術の名匠たちが正社員としてPP6ほかに勤務し、芸術品と呼ぶにふさわしい「レア・ハンドクラフト」を生み出していること。手仕上げギヨシェ装飾や彫金、七宝、木象嵌、ジェム・セッティングといった匠の技を究めた職人が存分に腕をふるい、世界中の時計愛好家の期待に応えるアートピースを手掛けつつ、スイスの伝統技術を保護し後進の技術者を育成しているのだ。

ジュネーヴ市内に位置するパテック フィリップ・ミュージアム外観
ジュネーヴ市内に位置するパテック フィリップ・ミュージアム外観

 創業以来の膨大なコレクションは、ジュネーヴ市内のパテック フィリップ・ミュージアムで見ることができる。約2500点におよぶタイムピース、オートマトン(自動人形)、希少なオブジェ、七宝細密画などを展示。ジュネーヴ、スイス、ヨーロッパの500年におよぶ時計製作の歴史と、1839年以来のパテック フィリップの時計製作の全貌を紹介している。ひとつのブランドの博物館という枠組みをはるかに超え、時計と伝統的装飾工芸技術の歴史を堪能できる、世界でも類を見ない愛好家必見の展示空間だ。

パテック フィリップ
カラトラバ 6196P
パテック フィリップ・スタイルの象徴のひとつであるカラトラバ・コレクション“96”の系譜に連なるプラチナ・ケースの新作。6時位置にスモールセコンドを配した、ヴィンテージ・タッチのローズゴールドめっきオパーリン文字盤が印象的。

手巻き。プラチナ、ケース直径38mm、3気圧防水。746万円。
問い合わせ=パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター Tel.03-3255-8109
パテック フィリップ
カラトラバ 6196P

パテック フィリップ・スタイルの象徴のひとつであるカラトラバ・コレクション“96”の系譜に連なるプラチナ・ケースの新作。6時位置にスモールセコンドを配した、ヴィンテージ・タッチのローズゴールドめっきオパーリン文字盤が印象的。

手巻き。プラチナ、ケース直径38mm、3気圧防水。746万円。
問い合わせ=パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター Tel.03-3255-8109

Text: Ken Sudo Photo: T-MAX Mitsuya Sada, Patek Philippe Japan